優秀賞 東京都小平市 犬馬 さん
作品タイトル:『国立の芝を踏みたい』
そう思って、高校生活最後の年に陸を始めた。
私の通う高校は通信制。その全国大会は国立競技場で行われる。
しかし、当然のことながら、陸上に芝は無関係。はっきり言って、動機は不純だった。
それから、4ヶ月。2年前の8月14日。
女子400mのファイナリスト8人だけが立つことを許された国立競技場のトラック。
1レーンから順に選手が紹介され、8番目に呼ばれたのは私の名前。手を上げて、礼。初めての全国大会。しかも決勝。緊張で何もかもがぎこちなかったと思う。
「位置について」
スタートブロックに足をかけ、視線を落とし、集中する。一瞬、音が消える。この瞬間が、一番好きだ。
「用意」
一瞬の間をおいて、ピストルが鳴る。前には誰もいない。
400mという種目を選択したのは、国立を一周できるから。やっぱり動機は不純だった。「究極の無酸素運動」だなんて、知らなかった。知らなかったからこそ、全国の決勝と言う舞台に立てたのかもしれない。
300m辺りになると足が思うように動かない。そんな時、いつも聞こえるのが仲間の声だ。
「頑張れ!」
学校の仲間、宮城県代表の仲間。皆の声を力に変えて、あと100m。もつれそうになる脚を必死に前へ前へと運ぶ。ラストスパートだ。
視界には5人の背中。ゴール手前で、それは4人になった。
全国5位。タイムは自己ベストを記録していた。
レース後、スタンドに戻ると、仲間達が拍手で迎えてくれた。「おめでとう」と。その温かい言葉と拍手に緊張が解け、涙が溢れた。感謝、嬉しさ、悔しさ。色々な感情が入り混じった涙だった。
そして、表彰式。表彰台を狙っていた私にとって、5位は不本意な成績。それでも、国立のトラックを3回も走れたし、一番の目的だった芝もコッソリ踏んだ。何より、成績以上に大切なものを得ることができた。恥じることは何もない。私は表彰台の横で、胸を張った。
■ たくろーからのコメント
動機なんて、どうでもいいんです。
夢・目標を実現できたことに意義があり、そこに青春があるんです。
うちの家内だって、大学でフランス語を選択した動機が「象に乗りたいから」ですから。こっちのほうが意味がわからない。
要は実現できるかできないかです。
まあ400Mを選択したのは勇気あるなと思いましたけど。
僕もピッチャーの時、練習でよく陸上競技場のトラックを走らされましたからね。
400Mのタイムトライアル!次元は違うけど、300Mを過ぎて最後のコーナーを回ったときの足の進まなさ、ケツの割れる感じのは共感持てます。
■ プレゼント
帽子、トレーディングフィギュア