努力賞 島根県浜田市 29歳 男性
作品タイトル:「老婆との文通の果てに・・・」
今年4月に、僕と親しかった82歳の老婆が急に亡くなった。この老婆とは、一昨年12月に知り合いあっという間に仲良くなりました。当時、僕は病院に介護福祉士として勤務していて、この老婆は患者の一人でした。老婆は、先天性小人症という生まれつきの病気で、とても小さく身長は1mちょっとしかありませんでした。そんな老婆は、手紙を書くことがとても好きで週に何通もの手紙や葉書を書き、友人だったり兄弟だったりに送っておられました。そして、昨年8月に老婆は退院し、老人ホームに入居されました。ちょうどその頃、僕は病院を退職しました。
老婆が退院して、1ヶ月余りすぎた頃に我が家に一通の手紙が届きました。その老婆からでした。それからというもの、1ヶ月に2通位づつの手紙が来るようになりました。僕からも、返事を書きました。その手紙が今年2月頃ピタリと来なくなりましたが、春になり暖かくなったら会おうと約束していたので、その暖かくなるのを待ちました。そして、4月になりすぐに老婆から久し振りの手紙が届きました。そして、4月19日にその返事を出しました。「4月23日に会いに行きますので、ご都合悪ければ知らせて下さい。」と書いて。23日になり、その老婆に会いに妻と娘2人を引き連れて老人ホームへ。
しかし、老婆がいたはずの部屋に名前が無い…なぜ??近くにいた職員に「Mさん(老婆の名前)は?」と尋ねると「Mさんですよね?昨夜(22日の夜)、急に亡くなられました。」と。我が耳を疑った。聞くと「今週に入って発熱があり風邪症状があったので病院に受診し薬を飲んで一昨日くらいからは熱も下がり、本人も「楽なった」と言っていたので、大丈夫と思っていたら、それが…」と職員も信じられないようでした。何だって、前日に・・・その再会は、ただの再会ではなく次女を初お披露目の予定でした。その前会ったのは、次女の生まれる1週間前10月17日に会い、明日が自分(老婆)の誕生日で凄く嬉しかったので、今度はお腹の赤ちゃんが生まれてから(妻は臨月だった)会いに来て下さいと言われていたから、その約束を果たす日だったのに・・・果たせなかった。きっと手紙は読んでくれていただろうにと悔いが残る。
5月になり生前老婆に聞いていた兄弟を訪ね、事情を話し墓地の場所を問い合わせたら、快く教えてくれた。そしてそれから2週間後に、老婆の眠る墓地に墓参りに、また妻と娘2人を引き連れて出掛けた。墓前で手を合わせたけれど、本当の約束は果たせていない。その老婆に謝りたい。「ごめんなさい・・・」と。でも、やっぱり悔いは悔いです。だから、また墓参りに行こうと思います〈合掌〉。
■ プレゼント
石井琢朗サインボール