最優秀たくろー賞 東京都世田谷区 Ritsuko さん

作品タイトル:「松井秀喜に似た女」

それは突然の出来事だった。熱心にスポーツ新聞に目を通していた夫が、「お前って、松井(秀喜)に似ているよな」と、ボツリとつぶやいたのだ。
そのセリフを聞かされた私は、返答に窮した。なぜなら、言われてみれば、なるほど私と松井選手の顔は、どこか似ているからだった。
しかし、私も年齢を重ねた身の上といえども女は女。おいそれと認めるわけにはいかない。とりあえずその場は「松沼弟(夫は松沼選手にそっくり)に言われたかないね」と、捨てゼリフを吐いて凌いだものの、その一件以来、「松井に似た女」というフレーズが、私の心の片隅に住みつくようになってしまった。
でも、そうなると気になるのが「どのくらい似ているか」だ。近所のママ友だちに「ねえねえ、私って松井に似ているでしょう?」と言ったところで、「うん! 似てる、似てる!」という正直者はいない。顔をひきつらせながらでも「え〜! 松井ってことはないわよ〜」などと言うだけだ。これではいつまでたっても真相を明らかにすることはできない。
そこである日、私は“賭け”にでた。初対面の人と、仕事の打ち合わせのために街中で待ち合わせることになったのだが、なにせ初対面同士、待ち合わせでお互いそれとわかるようにと、容姿の特徴を伝えあうことになった。そこで私はすかさず「野球の松井秀喜選手ご存じですよね? そう。あのゴジラ松井。私、彼に似ていますから、それを目印に声を掛けて下さい」と伝えたのだ。これで彼女が私と気付かなければ、“松井似”は私の思い過ごし、しかし彼女がすぐに気付けば、私と松井はかなり似ているということになる。
さて、運命の待ち合わせの日、どうなったかといえば…… 神保町の交差点の人混みの中、携帯電話も鳴らさずに声を掛けられましたよ、彼女に。「松井に似ている女」という一言だけをヒントに… ね(涙)。

たくろーからのコメント
イヤー、面白い!この自虐とも言えるネタに、NO文句で決まり!松井君を見るたびに思い出しそうです。というか、今度是非、NYでやってみて下さい!

プレゼント
石井琢朗使用バット、手袋